日本よりも短い?!マレーシアの産休事情をご紹介

マレーシアで出産・子育てをしようと決意した際、特に苦労したことの一つとして産休の調整があります。

女性社員が海外赴任中に妊娠・出産をするのは、今回が会社史上初めてのケースだったため、規定も整っておらず、ほとんどゼロから産休・育休のカスタマイズをしていただきました。

その間、自分でも日本とマレーシアの産休制度について調べたので、その内容を踏まえながら、マレーシアで働きながら出産・子育てをする予定の私が、実際に取得できた産休の内容についてご紹介していきます。

もちろん各会社のルールによって条件は微妙に変わると思いますので、一つのケースとして参考にしていただければ幸いです。

日本の産休‧育休制度

はじめに、日本の産休‧育休の期間と手当の概要をご紹介します。

日本の産休‧育休期間

  • 産前休業:出産予定日の6週間前(双子以上を妊娠している場合は14週間前)から取得可能。任意取得のため、休むか休まないかは本人の意思次第。
  • 産後休業:出産後8週間まで取得可能。法律で取得義務付け(ただし産後6週間経過後に医師が認めた場合は、就業も可能)。
  • 育児休業:産後8週間後の産休明けから子供が1歳の誕生日を迎える前日まで取得可能。取得は任意。また、保育所に入所させたくてもできなかったなどの事情がある場合は最大2歳まで延長可。
延長を行わない場合でも、合計15ヶ月超休暇を取得することができます。

日本の産休‧育休期間中にもらえる手当

  • 出産手当金:日本の場合、産休中は基本無給。しかし、勤務先の健康保険に加入していれば、健康保険から「出産手当金」が支給される。

被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat315/sb3090/r148

※出産手当金の金額(日給)は、原則支給開始日以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)で計算されるようですが、取得可否の判断や金額の決まり方には細かいルールもあるので、詳しくは会社の労務にご確認ください。

  • 出産育児一時金:出産手当金と同じく、勤務先の健康保険に加入している人を対象とした出産費用の補助金。

被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。

※多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されます。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat315/sb3090/r148
  • 育児休暇手当:民間企業に勤めている人に対し、雇用保険から支払われる手当。金額は原則として、育児休業開始日後6ヶ月は月給の67%、それ以降は月給の50%。育児休暇手当の計算に用いられる月給は休業開始前6ヶ月の平均額(上限424,500円)。
なお、各種手当の受け取りには、申請が必要です。詳しくは会社の労務にご確認ください。また、海外在住でも日本の企業に所属し、各種保険に入っている場合は、これらの手当の受給対象となります。

マレーシアの産休‧育休制度

続いて、マレーシアでの産休・育休制度についてご紹介します。

マレーシアの産休‧育休期間

マレーシアには実は育休という概念がなく、出産予定の妊婦に対し、産前産後合わせて60日以上の有給休暇を与えることが義務付けられています(ただし有給にできるのは5人目の子供まで)。

60日以上の範囲内で、休暇の日数を何日にするかの判断は各会社に委ねられており、私の所属する会社では連続90日(土日も含めてカウント)の産前産後休暇(英語でMaternity Leave)を取得することが可能です。

なお、マレーシアの大手銀行CIMBでは最近、第一子を出産した女性に対し最大6ヶ月の有給休暇を与えることを決め、話題になっていました。CIMBでは、無給の6ヶ月の休暇を追加することもでき、最大1年間のMaternity Leaveを取得できるそうです。

CIMB、第一子出産時の産休6カ月に延長

マレーシアの産休期間中にもらえる手当

日本の場合は、健康保険や雇用保険から各種手当が捻出される仕組みになっていましたが、マレーシアでは、雇用主負担でMaternity Leave中も賃金の100%が支払われるルールになっています。

ただし、体調や育児の都合で規定よりも長く休みを取りたい場合は、原則無給となるようです。

マレーシアでの産休取得の実情

前述の通り、マレーシアでは、産前産後合わせて2〜3ヶ月の有給休暇が取得可能で、その配分は会社と相談の上、自分で決めることができます。マレーシア人の多くは「産後の体調回復と子供との時間の確保」のために、産前ギリギリまで働き、産後になるべく多くの休暇を残しておくことが多いようです。

ランチタイムなどにオフィスの周りを歩いていて、お腹が丸々とした妊婦さんに出会わない日はないというくらい、皆ギリギリまで働いています。

また、産後には産褥ナニー(※)を雇ったり、産後のケアをしてくれる施設に入所するのが一般的で、産後1ヶ月は家事などもせず、母体の回復に専念します。

そして2〜3ヶ月後には、保育所やメイド+祖父母に子供を預け、スパッと職場復帰をすることがほとんどです。

産褥ナニーとは
出産後に自宅で、赤ちゃんとお母さんのケアをする専門職です。通常は1ヶ月程度住み込みで家事全般をこなし、母体回復のためのアドバイスや赤ちゃんのお世話の方法も教えてくれます。知り合いからの紹介や仲介会社を通じて見つけることができますが、年々その料金は上がっており、1ヶ月で20〜40万円前後がかかるようです。

マレーシアでの産休取得〜私のケース〜

ここからは、私が実際に取得できた産休の内容と、その決定に到るまでの流れをご紹介していきます。

結論からお伝えすると、原則はマレーシア法人のルールに従って90日のMaternity Leave(有給休暇)を取得し、その後90日間の無給休暇を取得することになりました(その他の有給休暇もあわせて約半年)。また、日本円で日本の口座に受け取っている一部の給与を対象に、日本の産休・育休制度を利用した手当なども取得できることになっています。

当初の計画

妊娠発覚当初、現地の先輩ママさんのブログや、会社のローカルスタッフへのヒアリングから、ここまでご紹介してきたマレーシアでの産休事情を把握した私は、「産前2週間まで働き、産後は1ヶ月間産褥ナニーを雇って体調回復につとめ、90日の休暇終了後は住み込みシッターさんに子供を任せて仕事に復帰しよう」と考えていました。

気持ちの変化

しかしその後に読んだこちら本に影響を受け、「子供が小さいうちはなるべく一緒に過ごして成長を見守りたい」という思いが強まり、なるべく長期間産休を取りたいという考えに変わりました(本については改めて紹介をしたいと思っています)。

東大生を育てた親ってどんな親なの?「賢い子に育てたい」という熱き思いの孤軍奮闘の体験を元に、賢い子を育てるための親の役割の重要性を解明します。

また、私の会社と夫の会社のローカルスタッフそれぞれから「家でシッターと子供を二人にするのは危ない。普通は他の家族が一緒にいるもの」というアドバイスを受けたのもあり、シッターを雇う説は消滅。保育園に預けられる時期(最速3ヶ月?6ヶ月のところも多い)までは、自宅で自分で子育てをしたいと考えるようになりました。

ビザの壁

そこで、「無給でいいから最大限産休を延ばしたい」という希望を会社に伝えたところ、その間のビザはどうするのかという問題が発生しました。

(我が家は夫婦ともにマレーシアで仕事をしているので、出産も育児もマレーシアで行うことを希望していました)

しかし、外国人がマレーシアに住むためには何らかのビザが必要で、私は就労パスで滞在をしていますが、就労パスはマレーシアで給与を受け取り、その給与額に応じた所得税を納税することを前提としているので、無給で休みをとり納税もしない外国人労働者がのうのうと滞在することは、きっと許されません。。

夫の会社で配偶者ビザを取ることも検討してもらいましたが、規定上、私が会社をやめない限りはビザの取得が難しいようでした。

その後、ダメもとで会社のマレーシア人にお願いして無給休暇取得の可否をイミグレーションに確認(交渉)してもらったところ、「3ヶ月程度であれば、出産という事情も考慮して、会社判断で無給休暇を付与しても良い(納税も免除)」という回答が返ってきました。なお、無給になるタイミングで、改めて申請が必要とのことです。

これにより、何とか合計半年間のMaternity Leaveを取得し、子供との時間を確保することに成功しました。

これからマレーシアで産休を取る方へ

ここまで、日本とマレーシアの産休・育休制度の違いや、私が実際に取得することになった産休の内容についてご紹介をしてきました。

日本人女性が海外で働きながら、出産・子育てをするケースはまだ多くなく、会社に規定がなかったり、人事も慣れていなかったりすることが多い印象です。

私の場合も、諸々の確認・調整に半年ほどかかったので、今後マレーシアで出産を検討されている方は、妊娠が分かった時点ですぐに上司に相談し、協力をお願いするのをおすすめします。また、産休の調整時には、以下のチェックリストも参考にしていただければ幸いです。

  • 出産・育児はどこで行いたいか
  • 日本・マレーシアどちらの産休・育休ルールに従うのか、それぞれどんな内容か
  • (マレーシアルールの場合)無給の休暇は追加できるか
  • 日本の産休・育休に関わる各種手当の受給資格はあるか(自分だけではなく旦那さんも)
  • 旦那さんの会社でDPは取れないか
  • 産休・育休に際して必要な書類は何か、いつまでに用意すべきか
  • 職場復帰後、子供を預けられるところはありそうか   などなど

終わりに

最後までお読みいただきありがとうございました。
今回の記事では「マレーシアでの出産に際して苦労したこと」の一つとして、産休の調整をご紹介しました。

今後も、出産・育児の中でぶつかるであろう「子供の出生届・パスポート・ビザの申請」や「保育園探し」についても、こちらのブログで紹介していきたいと思っています。

皆さんの体験談などもありましたら、コメントなどでシェアいただけると嬉しいです!

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